久々に面白い本を読んだので紹介したい。本名はルポ『貧困大国アメリカ』(岩波新書 760円+税)で、2008年に発刊されベストセラー本と言われていたので、すでに読まれた方も居られるでしょう。著者“堤未果”氏は東京生まれ、ニューヨーク市立大学でマスターを取得、米国野村証券に勤務中、9・11同時多発テロを隣のビルで直視したという美女だからこれも興味を引く。
目次を見ただけでも読みたくなってしまう。それではその目次に沿ってその内容骨子を紹介してみよう。如何にアメリカが精神的、健康的に病んだ「後進国」になり下がっているか、その姿に気づかされよう。
ニューヨーク州の公立小学校に通う生徒の半分が肥満だそうだ。原因は学校給食がファーストフード的内容で高カロリーのメニューとなっており、更に貧困児童の夕食はこれまたファーストフードやジャンクフードで揚げ物が中心になる。そして多くの家が「食料配給切符(食料交換クーポン)」に頼っているそうだ。
第2章:『民営化による国内難民と自由化による経済難民』
1979年、ジミーカーター大統領によって作られた「連邦緊急事態管理庁(FEMA)」が、ブッシュ政権時代に「自由競争」という言葉とともに“民営化”に走ってしまったという。FEMAの主要任務はいかに災害の被害を縮小し多くの人命を救うかという事だったのに、民営化により如何に災害対策業務をライバル業者より安く行う事ができるかを証明する事に代わってしまったと言う。2005年8月ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの際もFEMAの出動が大幅に遅れ洪水による巨大被害を発生させたが、これも民営化により救助対応が遅れた為に引き起こした問題で「人災」であると指摘している。
第3章:『一度の病気で貧困層に転落する人々』
80年代以降、“新自由主義”の流れが主流になり、大企業の負担する保険料を下げる為にアメリカは公的医療を縮小し、「自己責任」という言葉の下に医療費の自己負担率を拡大させて行った。結果は一度病気してしまうと個人破綻してしまう人が急増し続けている。
第4章:『出口をふさがれる若者たち』
2002年ブッシュ政権時代、「教育改革法(落ちこぼれゼロ法)」を打ち出したが、結果的には学力優秀だが貧困学生を選び出し、大学費用負担と職業訓練も可能と勧誘条件を出して軍隊に入れさせる“裏口徴兵政策”が幅を効かしている。
第5章:『世界中のワーキングプアが支える民営化された戦争』
アメリカは「市場原理」の導入により中間層は消滅し、貧困層は「勝ち組」の利益を拡大するシステムの中に組み込まれた。グローバル市場において、最も効率よく利益を生み出すものの中に「貧困ビジネス」があるが、その国家的レベルが「戦争」であると指摘する。現在イラク、アフガニスタンなど中近東の戦場で戦っているアメリカ軍兵士は貧困高卒生に加え、フィリピン人やメキシコからの不法入国者が民間戦争請負会社で採用され、生活保証という“甘い言葉”につらされて戦場に駆出されているのだと指摘している。
最後の「コラム欄」では“民営化はテロ行為より怖い。それは民営化の恐ろしさは責任の所在が明確でないことにある”と述べている。
何か、アメリカの体たらく状態が、日本にもしっかりと伝染して来ているようで不安である。そして現日本政府は「戦争」という「貧困ビジネス」を取り込もうと、その準備に入っているよにも感じてしまうのは私だけだろうか。
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