2016年8月28日日曜日

本の編集の楽しみ

私の参加している早稲田大学の「異業種勉強会」は今年で40年目を迎える。そしてこの会では5年毎に「記念誌」を発刊してきている。私は35周年記念誌から「編集委員」をやらせて頂いている。私は「本」というものはそこに書いた以上は一生残るという満足感を知っているので、「編集委員」を引き受けさせて頂き、是非一人でも多くの人が寄稿してくれるように勧めてきた。しかし「本を作り上げる楽しみ」の裏には結構面倒なことが多くある。まずは本の発刊の為の採算計算から始まる。何人に書いて貰って一人あたり何千文字として全体ページ数が決まり、表紙の質/デザインなど装丁を決めて本の制作費が出て執筆者数で割って一人当たりの負担額が算定される。さてそれから「執筆要項」を配布して寄稿者を募るのだ。目的の人数が確保出来きたら次は指定の期限内に原稿を提出して貰うのだが、今回の40周年記念誌からは原則データでの提出をお願いしたので、手書きのままの提出者は数人で済んだ。この手書原稿は原則「編集委員」がワードなど使ってデータ入力をしなければならないが、文章途中で写真や図を挿入する原稿の場合は二重手間を避ける為に印刷会社に任せてしまう。

そして8月に入って私のところに届いた原稿から順次印刷会社に原稿を送付、昨日これまで送ってあった原稿の「初稿ゲラ」が届き、これから各寄稿者に郵送して最後のチェックを受ける。まだ半分ほどの人からの原稿が未着でチョット心配になるが、今年11月にどんな「40周年記念誌」が完成するか楽しみである。上の写真は10周年から5年毎に発刊された記念誌6冊である。

2016年8月17日水曜日

芥川賞『コンビニ人間』を読んで

車中の雑誌【文藝春秋】の広告の中で芥川賞受賞作品の『コンビニ人間』という言葉に引き付けられて早速「9月特別号」を買ってしまった。小説の題材は昨今の便利過ぎる社会に生きるコンビ通いの人類を扱っているのかと思って読み始めたが、実は主人公はコンビニで働くアルバイトだったのだ。作者「村田沙耶香」氏は小学生時代から小説家にあこがれ、無我夢中で書きまくっていたという。そして早くも大学生時代に野間文芸新人賞や三島由紀夫賞を受賞し、この芥川賞にたどり着く片鱗を見せていたようだ。もの書きに没頭している時、コンビニでのアルバイトをしていた経験を生して今回の作品が生まれたと言う。作者の経歴を見ると、確かに世界観はコンビニを通してしか知らない事になるが、作品を読んでいてもその辺が上手に表現されていると思う。完璧にマニュアル化した【コンビニの世界】で一生懸命に生きる主人公が、「36歳にもなってアルバイト」、「なぜ結婚しないのか」と世間から奇人扱いされて悩むのだが、主人公の生き方と世間の考えとどちらが正しいのだろうか。コンビニ店をガラスで覆われた「光の箱」に例えて、その中での出来事を面白おかしく小説にしたもので、私もあっという間に読み切った久々に巡り合った力作である。

2016年8月7日日曜日

談志さんと投機マネー

マネー資本主義の悲劇を談志さんはこう表現したという。「労働の質に対応してお金に色を付けて欲しいね。ただ巨利を得るためだけに世界を走る『投機マネー』と田植えや稲刈りで汗を流して得た『お銭』とは札の色を変えなくちゃいけねぇ。卓上で画面を見ながら数秒間でマネーゲームをしている金なんぞは、もの作りなどで時間を掛けて作ったお金の1/3以下の価値にしてはどうか」
落語家の故・立川談志さんは、舞台の合間を見ながら自分で百姓仕事をしに新潟に足を運んでいたからお金の本当の値打ちをよく分かっていたのだ。

日本の賃金は先進主要国の中で低水準でドイツやフランスの6~7割という。何と日本国は恥ずかしい、そして貧乏な国なのか。我ら日本人は「誰がこんな国にした」と他人ごとのような事を言わずに、我ら日本人が本来持っているのに陰に隠してしまった”縄文人”としてのDNAを奮い起こし、欲のトリコにならずに足るを知る心構えを、一人ひとり自分の生活から見直しをして、日本人が得意とする地球上のあらゆる生き物と共生してゆく生き方を少しずつでも取り戻そうではありませんか。(参考:東京新聞・7月26日朝刊【筆洗】)