2016年8月17日水曜日

芥川賞『コンビニ人間』を読んで

車中の雑誌【文藝春秋】の広告の中で芥川賞受賞作品の『コンビニ人間』という言葉に引き付けられて早速「9月特別号」を買ってしまった。小説の題材は昨今の便利過ぎる社会に生きるコンビ通いの人類を扱っているのかと思って読み始めたが、実は主人公はコンビニで働くアルバイトだったのだ。作者「村田沙耶香」氏は小学生時代から小説家にあこがれ、無我夢中で書きまくっていたという。そして早くも大学生時代に野間文芸新人賞や三島由紀夫賞を受賞し、この芥川賞にたどり着く片鱗を見せていたようだ。もの書きに没頭している時、コンビニでのアルバイトをしていた経験を生して今回の作品が生まれたと言う。作者の経歴を見ると、確かに世界観はコンビニを通してしか知らない事になるが、作品を読んでいてもその辺が上手に表現されていると思う。完璧にマニュアル化した【コンビニの世界】で一生懸命に生きる主人公が、「36歳にもなってアルバイト」、「なぜ結婚しないのか」と世間から奇人扱いされて悩むのだが、主人公の生き方と世間の考えとどちらが正しいのだろうか。コンビニ店をガラスで覆われた「光の箱」に例えて、その中での出来事を面白おかしく小説にしたもので、私もあっという間に読み切った久々に巡り合った力作である。

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